エンターテイメントの世界は、昔から「性別」というテーマと深く関わってきました。実はトランスジェンダーやトランス女子の表現も、決して最近始まったものではありません。舞台、映画、アイドル文化、そしてインターネット。時代ごとに形を変えながら、少しずつ表舞台に現れてきました。今回はその流れを、エンタメの視点からざっくりと振り返ってみます。

舞台文化に見る「性別を演じる」伝統
まず、日本のエンタメ史で外せないのが歌舞伎です。江戸時代の歌舞伎では、女性が舞台に立つことが禁じられていたため、男性が女性役を演じる「女形(おんながた)」という文化が生まれました。もちろん、女形はトランスジェンダーとは別の存在ですが、「性別を演じる」という概念が日本のエンタメに深く根付いていた証拠でもあります。観客は“男性が女性を演じている”ことを知りながら、その美しさに魅了されていました。
つまり、エンターテイメントの世界では、性別は昔から「表現の一部」だったのです。

近代エンタメと「異性装」スター
20世紀に入ると、映画やテレビが登場します。この時代に多かったのは「異性装」をテーマにした作品でした。たとえば海外映画では、男性が女性に変装するコメディ作品や、女性が男性として生きる物語などが人気を集めます。こうした作品は、社会の性別観を揺さぶる存在でもありました。
ただしこの頃は、「トランスジェンダー」という言葉自体が一般的ではなく、多くの場合は“ネタ”や“珍しい存在”として扱われていたのも事実です。トランス女子が自分の人生として語られるケースは、まだまだ少ない時代でした。

90年代〜2000年代:当事者が語り始める
転機が訪れるのは1990年代以降です。欧米ではトランスジェンダーの俳優やアーティストが少しずつ登場し、日本でもテレビ番組やドキュメンタリーで当事者の声が取り上げられるようになりました。ただ、この時代のメディアは「衝撃的な人生」や「特殊な存在」として扱う傾向も強く、必ずしも自然な存在として描かれていたわけではありません。
それでも、トランス女子が「自分の物語」を語り始めたという点で、この時代は大きなターニングポイントだったと言えるでしょう。

ネット時代とトランス女子の新しいエンタメ
そして現在。YouTubeやVTuber、ライバー文化など、インターネットの登場によってエンタメの構造は大きく変わりました。テレビや芸能事務所の枠に入らなくても、自分の表現を世界に発信できる時代です。これはトランスジェンダー、とくにトランス女子にとって大きなチャンスでもあります。なぜなら、ネット空間では「身体の条件」よりも「キャラクター」「ストーリー」「世界観」が重視されるからです。歌、配信、アート、VTuber。表現の方法は無限にあります。
つまり、エンタメの主導権が少しずつ「個人」に移ってきているのです。

Seraが考える「これからのトランス女子エンタメ」
Seraとして注目しているのは、「トランスジェンダーをテーマにする」だけではなく、「トランス女子が文化を作る側になる」という未来です。トランス女子はこれまで、メディアの中で語られる存在でした。でもこれからは、物語を作る側、世界観を生み出す側になれる時代です。歌を作る人、舞台を作る人、配信をする人。そうやって少しずつ作品が増えていくと、「トランス女子のエンタメ文化」という新しいジャンルが生まれるかもしれません。
エンタメの歴史を振り返ると、いつも新しい文化は“周縁”から生まれてきました。もしかしたら次の時代のエンタメは、トランスジェンダーのクリエイターたちから始まるのかもしれません。
そんな未来を、Seraはちょっと楽しみにしています。
