少し前まで、トランスジェンダーは映画やドラマの中で「特別な存在」として扱われがちでした。たとえば、ボーイズ・ドント・クライやリリーのすべてのように、性別移行そのものが物語の中心に置かれる作品。どれも名作ですが、テーマは“葛藤”や“悲劇”に寄ることが多かった。

でも最近は少し違います。トランス女子が「特別なテーマ」ではなく、普通に恋をして、仕事をして、笑っている。そんな描き方が増えてきた。海外ではPOSEが象徴的でしたし、日本でもキャスティングや企画段階で当事者の声を反映させる動きが広がっています。


Z世代が求める“リアルな物語”
2020年代に入り、配信プラットフォームの台頭で視聴者の価値観も変わりました。Z世代は「正しさ」より「リアルさ」に敏感。無理に啓発的にするよりも、自然な日常の中に多様性があるほうが共感される傾向があります。実際、米国の調査会社Glaadのレポートでは、主要ドラマに登場するLGBTQキャラクター数はこの10年で増加傾向。数字だけでなく、「誰が演じるか」「誰が脚本を書くか」まで注目される時代です。つまり今は、“性別移行をどう乗り越えるか”だけでなく、“その人がどんな夢を持つか”が物語の軸になりつつある。

トランス女子×エンタメは“挑戦”じゃなく“戦略”
ここでちょっと現場目線の話を。芸能の世界では、「話題性」と「共感性」のバランスが重要です。トランスジェンダーであることを売りにするのか、それとも一要素にとどめるのか。実はこれ、戦略なんです。強く打ち出せば注目は集まる。でも長く続けるには、キャラクターや実力が不可欠。映画やドラマでも同じで、“属性”だけでは作品はヒットしません。最終的に問われるのはストーリーと演技力。だからこそ、トランス女子が主演する時代は、ある意味「本当の実力主義」の入口なのかもしれません。

Seraとしてどう扱うか?
Seraは、トランスジェンダーを“社会課題”としてだけ扱いません。むしろ、「面白い物語を作る人たちが、たまたまトランスだった」くらいの距離感でいたい。性別移行の体験は確かにドラマチック。でも、それを消費するのではなく、表現に昇華する。私たちが目指すのは、トランス女子が出演する映画やドラマが“特集”されなくなる未来。
「あ、この子かわいい」「この役、ハマってるね」――それだけで語られる世界。
